ブログを行ううえで、
著作権侵害をしないために
必要最低限知っておかなければならないことがあります。
それは、
・私的なブログでも著作権侵害となる、
・「引用」と書いただけでは著作権侵害となることがある、
・他人の画像、文章などを変えることはできない、
・自分で撮影した写真でも注意する、
・リーチサイトにも注意する、
です。
著作権って何?
そもそも著作権って何?
著作権という言葉を聞いたことがあっても
詳しくは分からないかもしれませんね。
そこで、まず著作権についてお話をします。
著作権というのは著作物に与えられる権利で、
小説、詩などの文章、写真、音楽など多くの創作物に与えられています。
ブログに書かれている文章などにも著作権が発生しています。
著作権は創作と同時に発生しており、
文化庁などに登録する必要は必ずしもありません。
著作者人格権と著作権(著作財産権)
著作権には、著作者人格権と著作権(著作財産権)とがあります。
紛らわしいのですが、
著作権といったときには著作者人格権と著作財産権とを指していることもありますし、
著作財産権のみを指していることもあります。
著作者人格権には、
・公表権(著18条)、
・氏名表示権(著19条)、
・同一性保持権(著20条)
があり、
著作権(著作財産権)にはブログに関係するものとして。
・複製権(著21条)、
・公衆送信権等(著23条)、
・翻訳権、翻案権等(著27条)
などがあります。
公表権は、
未公表著作物を公表する権利てす。
氏名表示権は、
著作物に著作者名を表示したり、逆に表示しない権利です。
同一性保持権は、
著作物の同一性を保持し、無断で変えられないようにする権利です。
複製権は、
著作物をコピーする権利です。
公衆送信権等は、
インターネットなどにより著作物を見せる権利です。
翻訳権、翻案権等は、
著作物を翻訳などする権利です。
上記の権利を著作権者以外の人が行うと著作権侵害となりかねませんね。
例外はないの?
著作権にも制限がありますので、
その制限にあたるときには著作権侵害とはなりません。
著作権の制限って何?
著作権の制限て何?
私的利用と引用
著作権の制限には、
・私的利用のための複製(著30条)、
・引用(著32条)、
などがあります。
私的利用のための複製は、
著作物を一定範囲内において複製できる、というものです。
引用は、
著作物を引用して利用できる、というものです。
私的利用のための複製、引用に該当すれば
著作権侵害とならないで著作物を利用できますね。
どうしたら私的利用、引用に該当するのでしょうか。
こんなブログは著作権侵害?
どんなブログが著作権侵害になるの?
他人の画像、文章などをそのままコピー・ペーストして
ブログにアップするのはもちろんダメです。
でも、そのほかにもいろいろ考えなければなりません。
私的なブログならいいのでは?
私的なブログなら、私的利用にあたるので
他人のものを利用できるにょか?
私的なブログでも私的利用にはあたりません。
ブログは私的なもので、商売でやっているわけではないので、
私的利用にあたる、という人がいるかもしれません。
ですが、私的利用は「個人的又は家庭内などの限られた範囲内」
において使用することを目的にする場合に限ります。
ブログは、不特定多数に向けて公表するものですから
私的利用にはあたりません。
また、特定の会員のみがアクセスできるブログでも
「限られた範囲内」にはなりません。
ですので、私的利用としてブログに他人の画像、文章などを
無断で載せることはできません。
著作権フリーの画像、イラストなどについては、
著作者の表示が必要など利用規約がありますので
その利用規約にしたがって利用することになります。
引用すればいいのでは?
引用と書けばいいの?
単に「引用」と書けば許されるものではありません。
引用は、「公正な慣行」に合致し、「正当な範囲内」でなければなりません。
「公正な慣行」に合致しなければなりませんので、
「批評」に必要なために他人の文章などを利用することはできますが、
必要もないのに他人の文章を利用することは引用とはなりません。
絵画を撮影してブログにアップすることは
公正な慣行として認められにくいと思いますので
引用として認められるのは難しいと思います。
たとえば、カギカッコで引用した文章を囲むなど、
他人の文章と自分との文章とを明確に区別する必要があります。
「正当な範囲内」でなければなりませんので、
自分の文章が「主」、他人の文章が「従」でなければなりません。
このため、他人の小説などをすべて引き写して、
最後に「自分は・・・と考える」と簡単な文章を添えるだけでは
引用とは認められません。
また、引用の出所を明らかにしなければなりません(著48条)。
著作物がどれか、何から引っ張ってきたかを明らかにする必要があります。
このように、引用と認められるのはいくつかのハードルがあり、
単に「引用」と記載しただけでは、引用とは認められません。
ブログでは、「 」のようなカギカッコではなく、
” ” のような quotation markを利用しても
他人の文章と自分の文章とを区別していると
判断されると思います。
ここに引用した文章を書く。
ここに出典を書く
未公表著作物について引用できるのかという問題がありますが、
そもそも未公表著作物を著作者に意に反して公表してしまうのは
公表権侵害になりますし、
出典を記載することもできませんので、
未公表著作物は引用できません。
他人の画像、文章などを変えてもいい?
他人の画像、文章などを勝手に変えてもいいの?
他人の画像、文章などを勝手に変えることはできません。
他人の画像、文章などを勝手に変えると、同一性保持権侵害となります。
他人の画像、文章の利用について契約により許諾を受けているのならば
その契約の内容によりますが、契約に著作物を変えることを許可する
ということが含まれていなければ同一性保持権侵害となります。
また、他人の写真などを勝手に変形すると翻案権(変形権)侵害(著27条)と
なりかねません。
他人の写真の一部を勝手に切り取っても同一性保持権侵害になりかねませんし、
「引用」により他人の文章などの利用が許される場合でも
その文章などを勝手に変えて引用できません。
他人の画像、文章をパロディとしてアップしてもいい?
パロディはどうなの?
パロディは、「他の芸術作品を揶揄や風刺、批判する目的を持って模倣した作品、あるいはその手法のこと」です。
ウィキペディアのパロディの項目から引用
パロディは、全く別の著作物と判断されない限り、
侵害と判断される可能性が高いと思います。
但し、パロディは二次的著作物の一態様ですから、
原著作権者の許諾を得れば利用できます。
将来的には、時代の変遷とともに変わっていく気がしています。
二次的著作物とは、ある著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、などすることによりできた
著作物です。
パロディは二次的著作物の一種です。
パロデイは全く別の著作物?
パロディは、元の著作物とは全く異なる別の著作物でしょうか?
元の著作物を揶揄、風刺、批判するのがパロディですから、
元の著作物を思い出さないようなものはすでにパロディとは言えません。
但し、パロデイの中でも
たとえば、「日本以外沈没」 (筒井康隆 著)のように
元の著作物である「日本沈没」(小松左京 著)とは
完全に別作品であれば元の著作物の侵害とはならないで
新しい著作物として成立します。
内容も表現も元の著作物とは全く異なります。
もっとも、筒井康隆先生は、小松左京先生の許諾を得て
「日本以外沈没」を創作したようです。
パロディは、元の著作者の許諾を得ればいい。
パロディは元の著作物を変形などすることで風刺などするもので、
元の著作物を変形する権利は元の著作者が持っているのですから、
元の著作者の許諾を得れば著作権侵害とはなりません。
但し、パロディの性質上、元の著作者の許諾を得ることは難しいかもしれません。
パロディは引用?
パロディは引用にはなりません。
パロデイについては有名な「パロディ・モンタージュ写真事件」(最判昭和55年3月28日)があります。
この事件は、雪山の斜面を複数のスキーヤーが滑走してシュプールが付いた原告の写真を利用して、
雪山の上に自動車タイヤを配置した合成写真を作成したものです。
この裁判において最高裁は、
①引用は、利用した著作物から作成されたパロディと
利用された著作物とを明確に区別する必要がある、
②利用した著作物から作成されたパロディが主、
利用された著作物が従となる必要がある、
③利用された著作物の著作者人格権を侵害しない態様とする、
と述べ、
同一性保持権侵害である、としています。
また、原告の氏名を表示していないことから氏名表示権侵害である、とも述べています。
そもそも、元の著作物をそのまま引用したのではパロディはできないのですから、
パロディは引用には当たりません。
パロディは共同著作物?
パロディは共同著作物とはならない可能性が高いです。
共同著作物とは、二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。(著2条1項12号)
(共有著作権の行使)第六十五条 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(以下この条において「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない。2 共有著作権は、その共有者全員の合意によらなければ、行使することができない。3 前二項の場合において、各共有者は、正当な理由がない限り、第一項の同意を拒み、又は前項の合意の成立を妨げることができない。4 前条第三項及び第四項の規定は、共有著作権の行使について準用する。
著作権法第65条第3項の規定を類推適用して、
元の著作物の著作者は元の著作物の利用を認める、
という考えもあるようですが、
その逆の考えもあります。
時代とともに変わっていく?
現在の状況としては、
日本の文化からしてパロディを受け入れにくい、
という考えが多いと思いますが、
諸外国のようにパロディが受け入れられていたり、
日本国内でも受け入れる方たちが多くなってきたら、
時代とともにパロデイが受けいられるようになると
思います。
しかし、元の著作物、元の著作者に対する尊敬の念を
忘れては絶対にいけません。
他人の文章を縮めてブログにアップしたいのだけど・・・
他人の文章を要約してブログにアップするのは?
単に他人の文章を縮めたときには著作権侵害となります。
単に他人の文章を縮めるときには、その文章の著作者の表現などを知ることができるので、
翻案と考えられます。
翻案権侵害となります。
但し、元の著作物である他人の文章の要旨を作成したり、
紹介したりするのは
元の著作物の文章の表現とは無関係なので、
著作権侵害とはなりません。
自分で撮影した写真をブログにアップしたいのだけど・・・
自分で撮影した写真はブログにアップしてもいいの?
自分で撮影した写真は自分自身が著作者ですから、
その写真をブログにアップしても問題ありません。
ただ、少し気になることはあります。
たとえば、彫刻は著作物だけど、屋外にある彫刻などを写真に撮ってブログにアップしてもいい?
これは著作権侵害にはなりません。
公衆の美術の著作物等を利用できる、と記載されています(著46条)。
屋外にある彫刻、建築物などを写真に撮ってブログにアップできます。
但し、慣行があるときには出所を明示する必要があります(著48条)。
また、美術の著作物、建築の著作物に限定されているので、
歌詞などが書かれた石碑を写真に撮ってブログにアップすることはできません。
街中で撮影していたら、たまたま他人のポスターやキャラクターが写り込んだけど、その写真ってブログにアップしてもいい?
ケースバイケースで判断するしかないのですが、
撮影した写真のメイン被写体ではなく背景に小さく写り込んだようなときには
認められると思います(著30条の2)。
但し、絵画が背景に小さく写った画像の画素数が極めて多く、
その絵画の部分を普通に鑑賞できてしまうようなときには
問題となってしまうかもしれません。
著作権法の問題ではありませんが、
他人の顔を区別できる程度に
他人が写ってしまった写真をブログにアップすると
肖像権侵害になりかねませんし、
有名人の顔が写っていた写真を
ブログにアップするとパブリシティ権の
侵害となりかねませんので、
注意が必要です。
リーチサイトは?
リーチサイトは、
「著作権侵害コンテンツを掲載している侵害サイトへのリンクを記載し、
侵害サイトに誘導することを目的としたサイト」
です。
リーチサイト規制については
著作権法改正により2020年10月から施行するようです。
・リーチサイト等を運営する行為等が刑事罰の対象となり、
・リーチサイト等において侵害コンテンツへのリンクを掲載する行為等が、
著作権等を侵害する行為とみなされます。
①リーチサイト対策(*)
・リーチサイト等を運営する行為等を、刑事罰の対象とする。
・リーチサイト等において侵害コンテンツへのリンクを掲載する行為等を、著作権等を侵害する行為とみなし、民事上・刑事上の責任を問いうるようにする。
(※)侵害コンテンツ:違法にアップロードされた著作物等
(※)リーチサイト:侵害コンテンツへのリンク情報等を集約したウェブサイト
文化庁 著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に
関する法律の一部を改正する法律案の概要 https://www.mext.go.jp/content/20200306-mxt_hourei-000005016_01.pdf から引用
また、著作権法改正において、
現行法では、
侵害コンテンツのダウンロードの対象が動画と音楽であったのに対し、
漫画、雑誌、写真、論文当にも拡大されるようです。
②侵害コンテンツのダウンロード違法化
・違法にアップロードされたものだと知りながら侵害コンテンツをダウンロードすることに
ついて、一定の要件の下で(*)私的使用目的であっても違法とし、正規版が有償で提供されているもののダウンロードを継続的に又は反復して行う場合には、刑事罰の対象にもする。 (※)音楽や映像については既に違法化・刑事罰化がされている。
文化庁 著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に
関する法律の一部を改正する法律案の概要 https://www.mext.go.jp/content/20200306-mxt_hourei-000005016_01.pdf から引用
保護期間を過ぎていればいいのでは?
保護期間って何?
著作権の保護期間は原則として、
著作者が著作物を創作した時点から著作者の死後70年までです。
この保護期間を経過した著作物については利用できます。
ただし、実際には保護期間が経過しているかどうかを確認することは難しいでしょうし、
海外作品であれば「戦時加算」というものがあり、
著作者の死後70年を経過したから利用できるというものでもありません。
また、著作権の保護期間は著作財産権についてのものなので、
著作権の保護期間を経過したからといって、
その著作物を変えてしまうことは問題がおきます。
保護期間の経過に頼らない方がいいでしょう。
アイデアを真似したらダメ?
アイデアを真似したら著作権侵害になるの?
著作権法は著作物の表現を保護するものですから、
表現そのものをコピー・ペーストすると著作権侵害となりますが、
著作物の裏にあるアイデアや思想を真似しても著作権侵害にはなりません。
但し、そのアイデアが特許法などにより保護されているときには
特許侵害となることがあり得ます。
動画投稿サイトにアップしている著作物は?
動画投稿サイトにアップしている著作物はどうなの?
著作権者が自分の著作物を動画投稿サイトにアップすることは問題ありません。
でも、著作権者でない人が他人の著作物を動画投稿サイトにアップすることは
公衆送信権侵害(著23条)になります。
では、なぜ動画投稿サイトには著作権侵害と思われる著作物がアップされているかというと
著作権侵害の訴えは原則として著作権者だけが行うことができるからです。
動画投稿サイトにアップされている自分のすべての著作物を
著作権者がチェックすることは難しいです。
このため、著作権侵害と思われる著作物が動画サイトにアップされているままに
なっています。
動画投稿サイトにアップされる読み聞かせ動画については、
こちらでわかりやすく説明されています。
まとめ
他人の創作物についてはすべて著作権が発生していると考え、
著作者、著作物について尊敬の念を抱く必要があります。
但し、あまりにも著作権に気を使いすぎると
何もできなくなることもあるので、
注意しながら
これくらいまではいい、
という感覚を身につけるべきです。